いつも心にIKKOを

理不尽なことで落ち込む、ちゃんとしたいのにやる気が出ない。私にはしょっちゅうそんな瞬間が訪れ、もやもやしたまま動けなくなり時間を浪費する。

もったいないのはわかっているけど、自分ひとりではどうしようもないから仕方がない。同じ悩みを抱えている人は、きっと他にもいるはずなのだ。けれども気分が沈んでいる時はひとりぼっちモードに入るので、誰にも共有できないし助けを求めることすらできない。

 

そんな私を救ったのはIKKOだった。みなさんご存知、美容家のIKKOが、ある日から私の心に住み着いたのである。

IKKOが心の中にはじめて現れたのは、バイトをしている時だった。仕事中の理不尽な出来事から、私の心が重くなりはじめた。今のは果たして自分が悪かったのか?どう対応するのが正解だったのか?自問自答が更に重くのしかかった。

すると突然、IKKOが人差し指を立てて左右に振りながら、「申し訳〜!」と興奮気味に走ってきた。もちろん、これは私の心の中での話だ。

それでも私は、IKKOとの邂逅により、何かを悟ったような気がした。そうだ、今後はとりあえずIKKOに謝ってもらおう。自分に非がないにも関わらず申し訳ない気持ちになるのは納得がいかないけど、IKKOが代わりにライトな謝罪をしてくれるなら、だいぶ楽になるかもしれない。

 

それ以来、私の心の一室にIKKOが住むようになった。基本的には「申し訳〜!」しか言わないが、最近は夕飯のメニューを考えていると「献立〜!」と入ってくるようになった。

実際のIKKOさんがこんな台詞を言っているかどうかはわからないし、たぶん言わないと思う。でも、そこは心の中なのでオールオッケー。何を言ってもらっても構わないのだ。

 

心の中に誰かを住まわせる、という試みは、以前にもしたことがあった。コウペンちゃん、というペンギンのキャラクターを思い描いて、落ち込んだ時は励ましてもらうといい、と人から勧められたのだ。最初の方はかなりうまくいっていたが、いくらキャラクターとはいえ、あくまで自分の想像だから、ポジティブな言葉を絞り出すのは気力のいることだった。

その点、IKKOは決して前向きなことは言わない。ハイテンションに謝罪するか、毒にも薬にもならない単語を挟んでくるだけだ。結果、IKKOは一年以上に渡って、私の心に住み続けている。最近はIKKOだけでなく、千原ジュニアとりゅうちぇるも越してきたので、かなり賑やかである。

 

千原ジュニアは、主に料理中出現する。かつてはレシピを見てきっちり作らないと気が済まなかった私だが、「ガーッ切って、ぶわー炒めて」と千原ジュニアが言ってくれるおかげで、気楽に雑な料理ができるようになった。

りゅうちぇるは、私が他人のことで悩みすぎている時に「でもそんなこと関係なくなぁい?」と話しかけてくれる。悪い意味で真面目すぎる私を、程よく緩めてくれる、心強い味方である。

 

ちなみに、私はこのお三方のファンというわけではない。むしろ、テレビをあまり見ないこともあって、正直よく存じ上げない。それでも、私の心に現れたのは何かの縁なのだと思う。今後も誰かが訪ねてきたら、ひとまず部屋に迎え入れるつもりだ。

 

もし、今これを読んでいるあなたが、ネガティブな気持ちで苦しんでいるのなら、ぜひ自分の中に現れた誰かの言葉に耳を傾け、その人を引き止めてみてほしい。ひょっとすると、その人はあなたの味方になってくれるかもしれない。

 

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これは2個の団子