日も沈み始めた帰り道、甘いおやつを手にセブンイレブンを出ると、交差点の角から男の子が歩いてきた。
黄色い帽子に、カバーのついたランドセル。巾着袋がぶら下がっている。小学校高学年くらいだろうか。
ちょっと歩いたら立ち止まり、またゆっくりと歩き始める。後方を歩く杖をついた女性を気にかけながら、ゆっくりゆっくり進む。どうやら、おばあちゃんと孫であるらしい。
その孫が、おもむろに口を開いた。
「ばあちゃん、おれ今日、帰ってから宿題やらなくていいんだ。学童でやってきたからね」
ふたりはまたゆっくりと歩き始めた。しばらくしてからおばあちゃんは「えらいねぇ〜」と一言、孫を褒めた。
え、えらいねぇ〜〜〜!!!!!
えらい、学童で宿題を終わらせてくるなんて、えらすぎる。
あくまでもただの通行人としてその場を通り過ぎた私だったが、心の中では少年へのスタンディングオベーションが鳴り止まなかった。
「帰ったらゲームするんだ」
すごい……家でゲームをすることまで見越して、宿題を終わらせたのか……私より計画性がある。
もちろん少年はおばあちゃんに向けて話しているので、私は一人でときめきに押し潰されそうになりながら、「オオ……えらい……きみはえらい……」と心の中で賛辞を呈するしかなかった。
物騒な世の中なので、他人の子供にそう簡単に話しかけることはできないけど、もし社会がもっと寛容だったなら、私は少年の肩を抱き、大きな声で叫んでいると思う。
きみはえらいっ!